2019 神戸大学 数理・データサイエンスセンター シンポジウム
~AIセキュリティとフィンテック応用の最前線~
神戸大学 数理・データサイエンスセンターでは、機械学習やブロックチェーン技術の社会実装の推進とデジタルトランスフォーメーションに対応する人材の育成を目指し、2019年5月に一般社団法人デジタルトランスフォーメーション研究機構を設立します。今回はそのディセミネーションイベントとして、フィンテック分野におけるセキュリティをテーマにしたシンポジウムを開催し、デジタルトランスフォーメーションを推進するうえで必須のセキュリティ技術について参加者と広く情報共有・意見交換する場とすることを目指します。
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シンポジウム概要
- 【日時】
- 2019年5月31日(金) 13:00~16:30(開場 12:30)
- 【会場】
- 大阪イノベーションハブ
- 大阪市北区大深町3番1号 グランフロント大阪 ナレッジキャピタルタワーC 7階
(北3のエレベーターをご利用ください) - 【共催】
- 神戸大学 数理・データサイエンスセンター、大阪イノベーションハブ
- 【後援】
- NPO法人 現代経営学研究所
- 【定員】
- 100名(参加費無料)
- 【プログラム】
2019年5月31日(金) | |
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時刻 | 内容 |
12:30~13:00 | 開場、受付 |
13:00~13:15 | 開会の挨拶 齋藤 政彦(神戸大学 数理・データサイエンスセンター センター長) |
13:15~13:55 | 【講演①】 機械学習のセキュリティと品質保証:金融分野での活用も展望して 宇根 正志(日銀金融研究所 情報技術研究センター 企画役) |
13:55~14:35 | 【講演②】 DXを支えるセキュリティ~ブロックチェーンの活用とサイバーセキュリティの重要性~ 白石 善明(神戸大学 大学院工学研究科 准教授) |
14:35~15:15 | 【講演③】 プライバシー保護データマイニングにより拡がるビッグデータ解析 小澤 誠一(神戸大学 数理・データサイエンスセンター 副センター長) |
15:15~15:30 | 休憩 |
15:30~16:20 | パネルディスカッション ■テーマ:AIの社会実装で拓かれる未来 ■司会:小澤 誠一 ■パネリスト:宇根 正志、白石 善明、齋藤 政彦 |
16:20~16:30 | 閉会の挨拶 栗尾 孝(神戸大学 数理・データサイエンスセンター 副センター長) |
講演情報
講演①:機械学習のセキュリティと品質保証:金融分野での活用も展望して
- 【講演概要】
- 近年、金融業界では、さまざまな領域でAIとりわけ機械学習の活用にかかる検討が進んでいます。機械学習を実装するシステム(機械学習システム)には、情報システム⼀般に存在する脆弱性に加え、特有の脆弱性も存在することから、対策を検討しておくことが望まれます。また、品質保証にかかる課題についても考慮することが重要です。本講演では、機械学習システムにおけるセキュリティや品質保証にかかる研究動向を説明するとともに、金融分野での活用を想定した場合の留意点を考察します。
- 【講演者略歴】
- 宇根 正志(日本銀行金融研究所 情報技術研究センター 企画役)
- 1994年3⽉に筑波⼤学第三学群社会⼯学類を卒業後、同年4⽉に⽇本銀⾏⼊⾏。2003年3⽉に横浜国⽴⼤学⼤学院⼯学研究科博⼠課程後期を修了、博⼠(⼯学)の学位を取得。2006年5⽉〜2007年6⽉、産業技術総合研究所情報セキュリティ研究センター招聘研究員を経て、2015年7⽉から⽇本銀⾏金融研究所情報技術研究センター企画役。金融分野に関連する情報技術や情報セキュリティ技術の調査研究に従事。
講演②:DXを支えるセキュリティ~ブロックチェーンの活用とサイバーセキュリティの重要性~
- 【講演概要】
- デジタルトランスフォーメーションを実現すると攻撃者による侵入点が増大し、サイバーセキュリティの重要性がますます高まります。データが価値を持つシステムを構築するときに、経済的利益を毀損しないための施策はコストではなく投資と位置付けるべきです。本講演では積極的にデータを活用する基盤を構築する観点から、守りと攻めのセキュリティについて述べます。
- 【講演者略歴】
- 白石 善明(神戸大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻 准教授)
- 2013年より神戸大学大学院工学研究科准教授。電子情報通信学会情報通信システムセキュリティ専門委員会委員長、同会情報セキュリティ研究専門委員会幹事など。電子情報通信学会暗号と情報セキュリティシンポジウム論文賞、同シンポジウム20周年記念賞、情報処理学会高度交通システム研究会優秀論文賞など。暗号技術の応用、サイバーセキュリティインテリジェンスに興味を持つ。
講演③:プライバシー保護データマイニングにより拡がるビッグデータ解析
- 【講演概要】
- IoTやAI、クラウドといった技術の進展に伴い、行政やビジネス、我々の生活に関わるあらゆる情報がデジタル化され、それが利活用されることにより、業務プロセスやビジネスと企業、人の関わり方に変革をもたらすデジタルトランスフォーメーションが注目されています。これが真の意味で実現されるには、プライバシーなど秘匿性を要するデータの安全な分析手法の確立が必要不可欠です。本講演では、準同型暗号により暗号化してデータを秘匿し、暗号化されたままで機械学習を行う研究をいくつかご紹介します。そして、この技術がビジネスに結びつくことで、将来どのような変革がもたらされ得るのかについて、我々が金融機関と連携して取り組んでいる不正送金(振り込め詐欺等)検知の事例を紹介しながら、考えてみたいと思います。
- 【講演者略歴】
- 小澤 誠一(神戸大学 数理・データサイエンスセンター副センター長)
- 神戸大学大学院工学研究科修士課程修了後、1998年博士(工学)取得、神戸大学大学院工学研究科准教授を経て、2011年より同大学院教授。機械学習、セキュリティ、プライバシー保護データマイニングなどの研究に従事。International Neural Network Society 副会長(会員担当)、Asia Pacific Neural Network Society 副会長(財務担当)、日本神経回路学会 国際理事、IEEE Trans. on Neural Networks and Learning Systems, IEEE Transaction on Cyberneticsの編集委員などを兼任。
開催報告
2019年5月31日(金)に「2019 神戸大学 数理・データサイエンスセンター シンポジウム~AIセキュリティとフィンテック応用の最前線~」を開催しました。
神戸大学 数理・データサイエンスセンターでは、機械学習やブロックチェーン技術の社会実装の推進とデジタルトランスフォーメーションに対応する人材の育成を目指し、2019年5月30日に一般社団法人デジタルトランスフォーメーション研究機構を設立しました。今回はそのディセミネーションイベントとして、「2019 神戸大学 数理・データサイエンスセンター シンポジウム~AIセキュリティとフィンテック応用の最前線~」を開催しました。
はじめに、神戸大学 数理・データサイエンスセンター センター長の齋藤政彦教授から開会の挨拶があり、続いて3件の講演が行われました。
まず、日本銀行金融研究所の宇根正志氏より「機械学習のセキュリティと品質保証:金融分野での活用も展望して」というタイトルで、金融分野において機械学習技術を活用する上でセキュリティをどう担保するか、また機械学習システムにおける品質保証の問題についてご講演いただきました。
次に、神戸大学 大学院工学研究科の白石善明准教授より「DXを支えるセキュリティ 〜ブロックチェーンの活用とサイバーセキュリティの重要性〜」をご講演いただきました。ご講演の中では、セキュリティをコストとして捉えるのではなく、企業のブランドや信用を守るためのであると考え、「攻め」と「守り」のセキュリティを進めていく必要性についてお話しいただきました。
続いて、数理・データサイエンスセンター副センター長の小澤誠一教授より「プライバシー保護データマイニングにより拡がるビッグデータ解析」というタイトルで、プライバシーを保護しながら機械学習技術を応用する研究について、アルゴリズムの解説や事例も交えながらご紹介いただきました。
講演の後は、「AIの社会実装で拓かれる未来」というテーマで、宇根氏、齋藤教授、白石准教授らによるパネルディスカッションを行いました。
パネルディスカッションでは、今後AIの社会実装を進めていく上でどういったアップサイドとダウンサイドが想定されるか、参加者との意見交換も交えながら、活発な議論がなされました。
最後に、数理・データサイエンスセンター副センター長の栗尾孝特命教授より、神戸大学数理・データサイエンスセンターが今月末に設立した一般社団法人デジタルトランスフォーメーション研究機構に関する紹介が行われ、今後デジタルトランスフォーメーションに対応する人材を育成するための社会人教育や共同研究を行っていく旨と、会員参加の呼びかけをして締めくくりとなりました。
本シンポジウムへは、企業・研究所関係者、教育研究者、学生など、82名の方にご参加いただきました。