センター概要

ファクトブック(強み・特色)

1. 他大学や他学部等にない独自性(強み)

数理・データサイエンスセンターの強み・特色

神戸大学では、「学理と実際の調和」を理念として、先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学として、世界最高水準の教育研究拠点の構築と新たな価値の創造に挑戦し続けている。世界的にデータ駆動型社会の到来が予想される中、数理・データサイエンスセンターは、数理・データサイエンスのリテラシー教育、そして数理・データサイエンスによる課題発見・課題解決に資する人材育成、そしてSociety 5.0を支える数理・データサイエンス及び関連分野における基礎および応用研究の推進、産官学地域連携による人材育成・共同研究の推進のために2017年(平成29年)12月1日に設立された。全学教育部門、研究部門、連携部門の3つの部門からなり、主配置、配置を含めて50名以上の教員が所属している。

全学教育部門においては、神戸大学の学部・大学院における数理・データサイエンス人材育成の仕組みを構築する事をミッションにしている。学部における全学的な数理・データサイエンス標準カリキュラムコースの設置により、様々な専門分野の学生に数理・データサイエンスの基礎を学び、リテラシーを身に付ける機会を提供している。大学院においては、関西地区の大学との連携により数理・データサイエンス人材育成プログラムを開発し実施している。

研究部門においては、科学的、社会的課題に対し、数理・統計科学、データサイエンス、人工知能およびその関連技術を専門とする教員と研究者が協同して問題解決を図るプラットフォームを構築する事をミッションとしている。基礎汎用チーム、社会実装チーム、価値創造デザインチームからなり、神戸大学の4大学術系列すべてから教員が参加しており、文理融合研究と先端研究を推進している。

連携部門では、Society 5.0における社会のDigital Transformation (DX)を見据えて産業界・自治体・海外機関との連携体制の構築をミッションとしている。

神戸大学の数理・データサイエンス教育の中心

インターネットやコンピュータが高度に発展した現在において、ビッグデータ、IoT(Internet of Things)、AI(人工知能)技術が産業構造や社会構造を変革している。また、第4次産業革命は情報化産業革命であり、これらの技術を産業や社会の様々な場面で活用していくことが求められている。データサイエンスは、様々なデータを分析・解析し、そこから新しい知見や価値を生み出していく技術・手法であり、数学や統計学を基礎とし、情報科学(プログラミング)によりコンピュータを活用して、様々な分野の専門知識と融合しながら、データから新しい価値を生み出していくデータサイエンスは、大学で学ぶべき新しい教養である。

数理・データサイエンスセンターはこの数理・データサイエンス教育を推進している。

神戸大学では、2018年度学部入学生から、データサイエンスの基礎を身につけることができる数理・データサイエンス標準カリキュラムコースを開設した。数理科目・統計科目・情報科目・データサイエンス科目のそれぞれで所定の単位数以上を修得し、かつ全体で14単位以上を修得することで、数理・データサイエンス標準カリキュラムコース修了認定証が授与される。2018年度は、国際人間科学部、経済学部、経営学部、理学部、工学部、農学部、海事科学部の1年生を対象として設定した。2019年度はこれに加えて文学部、法学部が加わった。データサイエンス科目としては、「データサイエンス入門A、B」、「データサイエンス概論A、B」などを新たに開講した。

また、2017年度に、文部科学省科学技術人材育成費補助事業「データ関連人材育成プログラム」に データ関連人材育成関西地区コンソーシアム(代表機関:大阪大学) が選定され、神戸大学 数理・データサイエンスセンターもこの事業に参画している。大阪大学、和歌山大学、滋賀大学、奈良先端科学技術大学院大学、神戸大学が協定を結び、特別聴講学生として他大学大学院生の相互受け入れを実施している。神戸大学は主にPBL科目を提供している。

2018年度には、文部科学省の未来価値創造人材育成プログラム「超スマート社会の実現に向けたデータサイエンティスト育成事業」として、「独り立ちデータサイエンティスト人材育成プログラム(DS4)」が採択された。大阪大学を代表機関とし、神戸大学、滋賀大学、同志社大学が連携している。神戸大学は、修士課程対象の機械学習、統計学、PBL科目を提供している。

数理・データサイエンスに関する基礎および応用研究の展開

数理・データサイエンスセンターでは、数理・データサイエンスおよびその関連分野における基礎・応用研究を推進している。

基礎汎用チーム

齋藤政彦教授は、研究代表者として大型研究プロジェクト「代数幾何と可積分系の融合 - 理論の深化と数学・数理物理学における新展開 -」基盤研究(S)(2017~2021年度)を推進している。これらのプロジェクトに基づく論文発表や国際研究集会開催等による当該分野への貢献は、国際的に高く評価されている。大川剛直教授は、CREST研究領域「[人工知能] イノベーション創発に資する人工知能基盤技術の創出と統合化」において「放牧牛のインタラクション分析による革新的管理技術の開発」(2016年度採択)を推進している。小澤誠一教授は、CRESTの同じ領域において、盛合志保氏(情報通信研究機構)と連携し「複数組織データ利活用を促進するプライバシー保護データマイニング」(2016年度採択)を推進している。さらに同領域の加速フェーズにおいて、花岡伍一郎氏(産総研)、盛合氏と共同で「プライバシー保護データ解析技術の社会実装」(2019年度採択)を推進している。また寺田努教授は(さきがけ)「社会と調和した情報基盤技術の構築」領域において「提示系心理情報学確立のためのウェアラブルシステムプラットフォーム」(2015~2018年度)を推進し、実証実験も行い注目を集めている。

社会実装チーム

木村建次郎教授は、「多重経路散乱場の逆解析理論」において、解析解の導出に初めて成功し、それを基に「非破壊画像診断技術」を確立した。これにより、鉄道トンネル3次元非破壊検査、蓄電池内-電流経路映像システムの構築、そしてマイクロ波マンモグラフィーの開発など多くの画期的な技術に応用されている。特に、マイクロ波マンモグラフィーは痛みや被ばくがなく、短時間・高速度に3次元撮影、画像診断可能なイメージングシステムであり、IGS社(Integral Geometry Science)によって実用化に向けた開発が行われている。上東貴志教授は、研究代表者として「包括的な金融・財政政策のリスクマネジメント:理論・実証・シミュレーション」基盤研究(S)(2015~2019)を推進している。

価値創造デザインチーム

井料隆雅教授は、「ポスト・ビッグデータ時代に向けた次世代交通システムの動学的マネジメント手法の構築」基盤研究(A)(2016~2019年度)を推進している。大村直人教授は「革新的プロセスを創生するプロセス強化技術のための渦動力学の体系化への挑戦」基盤研究(A)(2018~2022年度)を開始した。石川慎一郎教授は「アジア圏英語学習者自然対話コーパスICNALE-Dialogue開発と分析」基盤研究(B)(2017~2019年度)で、英語学習についてコーパス言語学を用いて研究を進めている。

外部資金獲得

2018年度においては、主配置教員5名、配置教員47名により、科学研究費補助金においては、基盤研究(S) 2件、基盤研究(A) 7件、基盤研究(B) 12件を含み、全体で40件、金額にして2億1635万円を獲得している。受託研究では、CREST 3件、さきがけ 2件、NEDO 1件を含み、全体で22件、金額では5億7420万円を獲得した。また、企業等との共同研究は23件、2801万円であった。

2. 最近における特記事項

全学教育部門

平成29年度(2017年度)
  • 平成29年度概算要求組織整備において、共通政策課題(数理・データサイエンスに係る教育強化)により、数理・データサイエンス教育センター(仮称)の新設が認められる。
  • 平成29年12月1日に数理・データサイエンスセンターが設置される。
  • 平成29年度科学技術人材育成費補助事業「データ関連人材育成プログラム」に、データ関連人材育成関西地区コンソーシアム(代表機関:大阪大学)が採択される。
  • 平成30年2月19日に、「データ分析コンテスト型 PBL 講習会」(大阪大学中之島センター)を開催した。
  • 平成30年3月8日、9日に、シンガポール南洋理工大学にて共同ワークショップを開催した。
平成30年度(2018年度)
  • 神戸大学 数理・データサイエンス標準カリキュラムコースが7学部の新入生に設置され、開始された。
  • データ関連人材育成関西地区コンソーシアムのプログラムが本格的に開始した。
  • 工学部科目として神戸大学「志」講義を開講した。(履修者数 79名)
  • データサイエンス入門A、Bを開講した。(履修者数 A(169名)、B(147名))
  • 特別講義 日本総研×神戸大学 オープンイノベーションワークショップ「ITと金融ビジネスの最前線」を開講した。(履修者数 学部25名、修士5名、博士後期課程3名)
  • 特別講義 日本総研×神戸大学 オープンイノベーションワークショップ「金融ビジネスと情報システム工学」を開講した。(履修者数 学部9名、修士7名、博士後期課程3名)
  • 文部科学省の未来価値創造人材育成プログラム「超スマート社会の実現に向けたデータサイエンティスト育成事業」として、「独り立ちデータサイエンティスト人材育成プログラム(DS4)」(代表機関:大阪大学、連携機関:神戸大学、滋賀大学、同志社大学)が採択される。
平成31年度(令和元年度)(2019年度)
  • 平成31年度概算要求において、共通政策課題(数理及びデータサイエンスに係る教育強化)による協力校の事業「大学連携と産学地域連携を活かした数理・データサイエンス標準カリキュラムの開発と地域への普及」が採択される。

研究部門

平成30年度(2018年度)
  • 「神戸大学CMDS論文セミナー」を開催し、データサイエンスやAI関係の先端的な論文紹介を行った。(前期:10回、後期:14回)
  • 神戸大学CMDS先端セミナーを2回開催した。内容は「セキュリティやプライバシー保護を支える暗号技術の最新動向」(盛合 志帆(情報通信研究機構))、 「自然言語処理の挑戦的課題~いまできていること、いないこと」(狩野 芳伸(静岡大学))である。
  • 2018年12月1日に神戸大学 数理・データサイエンスセンター 1周年記念シンポジウムを開催した。企業・研究所関係者、教育関係者、学生など、240名が参加し盛況であった。
平成31年度(令和元年度)(2019年度)
  • 「神戸大学CMDS論文セミナー」を開催し、データサイエンスやAI関係の先端的な論文紹介を行った。
  • 神戸大学CMDS先端セミナーを3回開催した。内容は「Deep Learning: “Going beyond Deep Learning in Understanding Human Behaviors in Image Sequences”」(Dr. Jordi Gonzalez(バルセロナ自治大学 (UAB)))、「Social Networks: “Towards a Visual Inference of Personality Traits based on Images Shared in Social Networks”」(Dr. Jordi Gonzalez(バルセロナ自治大学 (UAB)))、「自然言語処理は深層学習で解けるか:医療言語情報処理からみた今後の課題」(狩野 芳伸(静岡大学))である。
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