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プライバシー保護深層学習技術を活用した不正送金検知の実証実験において金融機関5行との連携を開始

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長:徳田英幸)サイバーセキュリティ研究所セキュリティ基盤研究室は、独自に開発したプライバシー保護深層学習技術「DeepProtect」*1を利用し、国立大学法人神戸大学、株式会社エルテスとともに、現在の大きな社会課題である不正送金*2の自動検知をめざして、データの利活用とプライバシー保護を両立できるプライバシー保護深層学習技術の研究開発及び実用性検証に取り組んでいます。

「DeepProtect」は、データそのものを外部に送ることなく、複数の組織内で学習した結果のみを暗号化して中央サーバに集め、中央サーバで暗号化したまま学習結果を更新できる技術です。このたび、不正送金の自動検知の精度向上に向けて、既に連携してデータ解析を進めてきた千葉銀行に加え、三菱UFJ銀行、中国銀行、三井住友信託銀行及び伊予銀行が実証実験に参加し、オープンイノベーションによる実施体制を構築しました。各組織のデータを互いに開示することなく、複数組織による協調学習が可能なシステムを目指します。

※本実証実験は、2019年度からJST CREST「イノベーション創発に資する人工知能基盤技術の創出と統合化」の加速フェーズ研究課題として採択された研究課題「プライバシー保護データ解析技術の社会実装」のもとで実施しています。

用語解説

*1 プライバシー保護深層学習技術「DeepProtect」
各組織で持つデータを基に深層学習を行う際に、学習中のパラメータ(勾配情報)を暗号化して中央サーバに送り、中央サーバでは、暗号化したまま学習モデルのパラメータ(重み)の更新を行うことができる。この更新処理は加算のみで行えるため、暗号化したまま加算が可能な「加法準同型暗号」を使うことで効率的に実現可能となっている。複数の組織からの学習データを基に更新されたこの学習モデルのパラメータを各組織においてダウンロードすることで、より精度の高い分析が可能になる。各組織から中央サーバにデータそのものを送ることなく、学習中のパラメータのみを暗号化して送信するため、データの外部への漏えいを防ぐことができる。本技術により、各組織で持つデータを外部に開示することなく、複数組織で連携して多くのデータを基にした学習が可能となる。本技術は下記ジャーナルに採択・掲載されている。 L. T. Phong, Y. Aono, T. Hayashi, L. Wang, and S. Moriai, "Privacy-Preserving Deep Learning via Additively Homomorphic Encryption", IEEE Transactions on Information Forensics and Security, Vol.13, No.5, pp.1333-1345, 2018.

*2 社会課題となっている不正送金
被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(総称して「特殊詐欺」という)の全国での被害金額が8年連続で300億円を超える(警察庁調べ)など社会課題となっています。

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